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原始社会・古代文明

「赤ちゃんをあやすための道具」の延長線上に、超自然的な存在や世界との橋渡しを行うもの、神秘的な力を引き出すもの、宇宙と人間をつなぐもの、目には見えない存在を鎮めるものとしての音楽が確立され、やがて祈祷や葬送などの様々な儀式、更には心身の治療にも使用されていくようになったと考えると納得がいきます。

音楽が心身の病気を癒すために古くから使用されてきたことは、よく知られている事実です。未開の原始社会において、シャーマン達は音楽を使って悪霊を祓ったり、病を癒したりするために、歌や太鼓、様々な打楽器や踊りを使用してきました。(Radin, 1948; Densmore, 1948)

そもそも原始社会では、自然の音のみならず人間の歌声や叩いて出る音など、すべてが「神の声」として捉えられていました。そして霊感のあるシャーマンが、悪霊に取りつかれ病気になった人々に「神の声」を伝え、精霊を祓い、癒す役割を担っていたのです。未開の人々は、人間が病気になるのは悪霊が住み着くからだと考え、音楽を利用して体内に住む精霊を追い払ってきました。興味深いことは、これがある特定の地域や特定の民族グループにおいて行われていたものではないという点です。全世界という幅広い地域で、いずれの民族でも音楽術者としてのシャーマン達による治療活動が行われていたことが人間社会における音楽の役割の普遍性を示していると言えます。

(シベリアのシャーマン/写真はこちらのHPからの転用になります(c)Alexander Nikolsky / Siberian Times)

音楽が遥か昔から治療行為に使われていたことを証明するものとしてよく引き合いに出されるのが、旧約聖書の中に出てくるダビデ王に関する記述です。

下記の絵は19世紀末・20世紀初頭に活躍したスウェーデンの画家Ernst Josephson作の『ダビデとサムエル』の絵で、「ダビデ王はその竪琴でサウル王の憂鬱を癒し、悪霊を追い払った」(旧約聖書『サムエル記』第一16.14-23)という聖書からの一文を描いているものです。

(Ernst Josephson, "David and Saul", 1878)

BC3000~BC30の古代エジプトにおいても、僧侶・医師たちが音楽を魂の治療薬として医療に組み入れていましたし、古代インド・中国でも同様に音楽を使用した治療が行われていた記録が様々な形残されています。

また、古代ギリシアやローマでは「色々なタイプの精神疾患の症例が、歌で治療された」という記録が残されています。(Bruno Meinecke, 1948)

中でも「ピタゴラスの定理」で良く知られているピタゴラス (紀元前 582-496年)は、「音を科学」的に捉え、音楽に治癒能力があることを証明しようとしたことで有名です。ピタゴラスは、音に対して初めて科学的なアプローチを試み、「音程は数の比で表される」ことを発見しました。これがピタゴラス音律Pythagorean tuning と呼ばれるものです。

ピタゴラスは「数」が万物の根源であり、音楽にも「数」の秩序があることから、音楽の調和によって心の不調和が癒されると考えました。そして人間は「調和のとれた宇宙を真似ている音楽を通して、天体の調和を魂の中に同化し、更には浄化することができる」と考えたのです。

(イメージ画はこちらのHPからの転用となります)

病気の原因は魂の不調であり、宇宙の法則を反映する音楽は、魂を調律し、覚醒させ、調和をもたらすことによって不調を癒す、というピタゴラスのこの主張は、ソクラテス、プラトン、アリストテレスといった古代ギリシアの哲学者たちにも受け継がれました。

(ソクラテス(左)とアリストテレス(右)/Raffaello Santi, "Scuola di Atene", 1509-1510)

 特にアリストテレスは、ギリシア悲劇と同じように「音楽には身体に溜まった悩みやモヤモヤを吐き出してスッキリさせる効果がある」とカタルシス(浄化)の効果を強調し、悲しいときは 美しい音楽を用い、悲哀の気持ちに共鳴させ、吐き出させてから明るい音楽に 移行することで精神のバランスがとれ、カタルシスが得られると理論的にその根拠を展開しました。>>NEXT