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ソルフェジオ周波数について

音楽と周波数と言えば、近年注目されているソルフェジオ周波数(Solfeggio Frequencies)というものにも一言言及しておきたいと思います。

これは1999年にアメリカのジョセフ・プレオ博士とレオナルド・ホロビッツ博士(Joseph Puleo, Leonard Horowitz)によって提唱されたものです。プレオ博士とホロビッツ博士は、9世紀頃のローマ・カトリック教会のグレゴリオ聖歌には現在のような12音音階ではなく、ヘクサコルド(ヘキサコード)と呼ばれる癒しや覚醒といった効果を持つ6音音階が使用されており、その周波数の中でも「愛の周波数」と呼ばれる528Hz  が「奇跡的なDNAの修復や細胞の回復」を行う効果を持つと主張しました。ホロビッツ博士はその後の研究で奇跡の力を持つスピリチュアル的な周波数を6つではなく、9つとしており、そのためYouTubeなどで「ソルフェジオ周波数」と検索をすると、9つの周波数それぞれを使った「ヒーリング音楽」が沢山ヒットします。(詳しくはこちらのHPをご参照ください)

このソルフェジオ周波数は内容がセンセーショナルでインパクトが強いこともあり、「モーツァルトを聴くとIQが上がる」という説と同じように、インターネットを中心に瞬く間に世界に広まりましたが、学術的な根拠は残念ながらないようです。

それと言いますのも、前述したようにグレゴリオ聖歌は教会旋法に基づいて書かれているのですが、この教会旋法が降盛を誇っていた中世では、「ラ」は440Hzというような絶対的な音の振動数の概念は存在しなかったからです。(当時の中世ヨーロッパで標準ピッチを定めていたという事実もなければ、標準ピッチを客観的に測定する方法も存在しなかった、そもそも中世のヨーロッパでは「秒」の概念が存在していなかったことが、このソルフェジオ周波数の説を否定する論議の最も強力な反論点になっています)。

 

国際標準ピッチと呼ばれる「ラ」の振動数が440Hzと定められたのは、1939年のことです。それ以前は、国や都市、時代によってピッチは異なっていました。17世紀頃は標準ピッチの周波数は370 ~ 560 Hz もの幅があったと言われています。また都市によって音叉の基準が変わるというのはその後の時代でも同じで、例えばバロック時代を例にとるとドイツに住んでいたバッハは415 Hz、バッハと同時代人でイギリスに住んでいたヘンデルは422.5Hz、次の古典主義の時代になりますとモーツァルトは 421,6Hz、ベートーベンは433Hzとなっていたようです。この数値は、現存するそれぞれの「音叉」の周波数が根拠になっています。

ちなみに基準ピッチがまちまちであるという状況は19 世紀後半まで続いていました。そのため1884年、「ヴェルディがその政治力を発揮して歌手に最も負担がかからない432Hzをイタリアの法律で基準ピッチに定めさせた」という記録が残されているようです。(『ピタゴラス音律~小学校専門科目「数学」での実践~』、馬場良始、数学教育研究第41号、2012)

現在国際標準ピッチは上述したように「ラ」=440Hzと定められていますが、この標準ピッチには法的な拘束力はないため、各オーケストラによって比較的自由に基準となるピッチを選択しています。そしてピッチが高い方が華やかに聞こえるため、実際には442Hz~448Hzで演奏されることが多いようです。(詳しくはこちらのHPをご参照ください)

現存する音叉の存在から17世紀の標準ピッチの周波数が場所や時代によって370~560Hzという幅広い揺らぎを持っていたという事実、あるいは現代でも明確な標準ピッチが定められているにも関わらず、演奏に使用されるピッチが上昇傾向にあるという事実は、人間の耳が「音」を捉える感覚と心理を考える上で、色々と興味深い仮説がたてられることを示していますし、何よりも「音」が風土や人々の生活習慣、時代背景、「時間感覚」、人間の生理機能などと密接に繋がっていることを示唆しているものと言えます。

周波数を測定する周波数測定機器「周波数カウンタ」や、データを解析するPC機器、脳波計等の技術機器の能力が著しく上がった今日、ソルフェジオ周波数的なミステリアスで話題性のある説はさておき、「周波数」が人体に及ぼす影響を対象にした、興味深い学術研究は今後ますます多く行われることになるだろうと思います。

ただ、重要なことは、音楽(西洋音楽)は「周波数」(音色)だけで構成されているのではない、という点です。音楽というのは「音」の振動数を表す周波数(=音色)の他に、リズム、メロディー、ハーモニー、拍子、テンポ、調性、ダイナミクス、アーティキュレーション、フレーズ、ベース・ラインといった要素から成っています。そして現代では、そのそれぞれの要素が音楽療法の観点から直接的・間接的に心身に与える影響も定義化されています。(詳しくはこちらのHPをご参照ください)>>NEXT